《MUMEI》
愛は会社を救う(17)
「やらせてください…」
緊張が頂点に達し、色を失った知子の頬が凍りつく。相手の意図を測りかね、この後の様々な展開が頭の中を駆け巡っているのが、私には手に取るようにわかった。
「お茶当番、私にもやらせてください。お願いします」
それを聞いた途端、安堵した知子の全身から一気に力が抜け落ちる。
眼を閉じて長い息を吐いた後、気を取り直すように再び私を睨みつけた。
「そ、そうね。…いい、心掛けね」
まだ微かに声が震えている。頭の中に浮かんでいた邪な想像を、男に悟られまいとして必死に平静を装っているのがわかる。
「前の派遣は女性だったけど、あなたにもやってもらうわ。月曜日から、いいわね」
「はい。よろしくお願いいたします」
私は不敵な笑みを浮かべながら、逃げるように早足で部屋を出て行く知子の背中を見送った。

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