《MUMEI》
愛は会社を救う(19)
「チーフの山下さんも地元採用ですよね。丸亀さんから聴いたんですが、とても優秀な方なんですって?」
こちらは批判を期待し、少なからず皮肉を込めて言ったつもりだった。しかし返ってきたのは、意外なニュアンスの答えだった。
「ええ。素敵ですよね、山下さん」
見ると由香里は、カクテルグラス片手に、うっとりとした視線を中空に漂わせている。
「スタイルが良くて、頭が良くて、仕事ができて。おまけに男の人に対して、とってもクールで…。私にとって理想の女性像なんです」
私はなぜだか少し可笑しくなって、声を立てずに肩だけで笑った。
そんな私に気付いて我に返ったのか、由香里が些か慌てた様子で言葉を取り繕う。
「社会人としての目標。そういう意味ですよ」

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