《MUMEI》
早々に再会
「青春だな」


(この声…)


「…龍さん?」

「よ、また会ったな」


軽く手を上げたのは、確かに花火大会で見かけた、龍さんなのだが…


「何、してるんですか?」

「地域に貢献?」


(何故疑問形?)


龍さんは、地元の商工会のはっぴを着ていた。


「知り合い?」

「まぁ、ちょっとね」

「ふ〜ん」


志貴はジロジロと龍さんを見ていた。


(さすが、志貴)


龍さんの体格や、鋭い目付きに全くひるんでいない。


「そんなに見られたら、照れるな」


龍さんの豪快な笑い声が響いた。


「賑やかね」

「「志穂さん」」


ピタッ!


(…ん?)


龍さんの顔から笑みが消えた。


「一人で来たんですか?」

「希と一緒に来たの。慎は、祐希の施設の盆踊りのボランティアに行ってるから」

「そうなんですか〜」


志貴と志穂さんはいつも通り、会話している。


コソコソ…


そんな表現が正しいほど、龍さんは背中を丸め、忍び足でその場を去ろうとした。


が…


「こんばんは」

「こ、コンバンハ」


志穂さんの笑顔と声に、龍さんは足を止めた。

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