《MUMEI》

「そーいや、千代は誰かに渡したりしねーの?」

「あたしは──特に好きな人とかいないし」

「ぁ‥、悪ぃ」

「謝る事ないよ、それより──」

「?」

「宮上君にもあげるんだよね?」

「──ぁぁ。アイツにもやる」

でも──‥

あれっきりあんまし会ってないんだよな‥

アイツと──。

アタシがまだ静瑠といがみ合ってた頃‥

アイツはアタシの相談に乗ってくれた。

好きだとも言ってくれた。

今でもアタシは──

アイツを忘れた訳じゃない。

だから

アイツにも渡そうと思ってる。

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