《MUMEI》 愛は会社を救う(20)「わかってます」 私の言葉を聴き、由香里がほっとしたような笑顔を見せる。それで気を許したのか、少し真剣な表情に戻って少しずつ本音を語り始めた。 「でも男の人たちは、山下さんにお伺いを立てるの、嫌みたいです。プライドとか、副支店長の手前とかもあるんでしょうけど」 「男には、そういうつまらん所がありますからね」 私はブランデー・カクテルを飲み干すと、唇に付いたグラニュー糖を舌で絡め取った。 「確かに、それってわからなくもないんですけど」 「だったら…」 そこまで言って私はバーテンダーを呼び、2杯目のシカゴを頼んだ。 「だったら早く、藍沢さんが山下さんの代わりになればいい」 「え?」 眼を丸くした由香里が、勢いをつけて私の横顔を見る。 前へ |次へ |
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