《MUMEI》 『お嬢様』──なんて言われた事ないから‥何だかくすぐったい気分。 「どうぞ、こちらへお掛け下さい」 席に案内してくれたのは、黒髪で優しそうな印象の人。 椅子を引いてくれて、私が座るとすぐにナプキンを付けてくれた。 「あの──」 名前を訊こうとして、その人ねスーツの胸ポケットに付けられた名札に気付いた。 【KOUKI】 コウキさんっていうんだ──。 「ぁ、えっと‥」 「はい」 「後で、お話いいですか?」 「勿論でございます」 コウキさんは、軟らかく笑った。 「お決まりになりましたら──ベルを鳴らしてお呼び下さいませ」 「ぁ、はい──」 私は頷いて、メニューを広げた。 前へ |次へ |
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