《MUMEI》

「お口に合うと良いのですが──」

「──美味しい──」

「良かったです」

「ここ──素敵な所ですね」

私が言ったら、コウキさんは、ふわり、と笑った。

「何を仰いますか」

「ぇ‥?」

「此処は、お嬢様──貴女様のお邸でございますよ」

「─────ぇ‥」

「そして、私はお嬢様の執事でございます」

そう言われて、何だか心が温かくなった。

ケーキをとレモンティーを交互に口に運びながら、思わず笑顔になる。

「幸せ──」

呟いた私を見て、コウキさんは嬉しそうな表情をした。

どうしてかな‥?

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