《MUMEI》

彼は穏やかに笑った。


「有り難うな。

俺、自分の目標見失ってた。」


「思い出せたのか?」


「ああ……。

けど今はちゃう。」


「え?」


俺と颯ちゃんは興味津々で身を乗り出した。


だけど彼は目を泳がせて、
吃るばかり。


「どうしたんだ?」


颯ちゃんがそう尋ねるも、
彼は言いづらそうにして俯いている。


「その……言い辛いなら…別に無理しなくて良いよ?」


「……い、いや……。

無理してへん。」


「だったら何で黙ってんだよ?」


「その……ちょっと。」


「何?

そんなに凄いこと?」


「そ、そうやなくて……あーもうっ!」


彼は意を決したように、
真っ直ぐとこちらを向いた。


「俺……お前等と強くなりたい。」


「え!?

俺等と!!?」


「何で!?」


これには度肝を抜かれた。


だって、
あの凪谷賢史が!


テレビの中だけの世界の人が!!


俺達と……。


強くなりたいだって?

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