《MUMEI》 「どうぞ」 促されるがまま、私は扉の向こうに、一歩足を踏み入れた。 「お帰りなさいませ、お嬢様」 「──ぇ」 お嬢‥様‥? それよりも‥、ここって‥何のお店なんだろう‥。 「お嬢様、こちらへ」 「ぇっ‥」 手を取られて、席へと案内される。 恐る恐る顔を上げると、金髪の美男子。 「‥‥‥‥‥‥‥」 嘘っ‥。 何だか夢みたいな気がして、思わず自分の頬を抓る。 ──痛い。 夢じゃ‥ないんだ。 「どうぞ、お掛け下さいませ」 「ぁ、ハイ‥」 ぎこちなく答えて、そっと引かれた可愛らしいデザインの椅子に腰掛けた。 前へ |次へ |
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