《MUMEI》

その人が顔を上げた時、私は初めて、彼が名札を付けている事に気が付いた。

【HIKARU】

ヒカル──。

綺麗な名前‥。

「本日は何に致しましょう、お嬢様?」

「ぁ‥、ええと‥」

私は、ブラウニーとミルクティーを注文した。

「畏まりました、少々お待ち下さいませ」

ヒカルさんは、ニッコリと私に笑いかけて──奥に戻って行った。

私は天井に吊された、大きなシャンデリアを見上げて──小さく溜め息をついた。

「───────」

私‥ちゃんとやっていけるのかな‥。

「──お待たせ致しました」

「‥?」

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