《MUMEI》
初めての海
(結構普通だな)


別荘は、外観も内装も至ってシンプルで、それほど驚きは無かった。


「意外と落ち着いてるのね。普通の反応ああなのに」


志貴が指差した先には


開いた口が塞がらない屋代さんがいた。


(しまった、失敗した)


そんな、俺だったが


実は、内心かなりハイテンションだったりする。


(だって本当に広いし大きいし!)


目の前に広がる青い空と、海。


それは


俺にとっては生まれて初めての景色だった。


ただ


この歳で、生まれて初めて海を見ると言うのは


かなり普通ではないので


俺は、緩みそうになる口元をなんとか引き締めるのに必死だった。


そんな俺を含めた全員に


果穂さんが一方的に決めた部屋割りが発表された。


(これ、…いいのか?)


俺も含めた何人かは絶対に疑問に思ったはずだが


誰一人


口に出す者はいなかった。


「じゃ、荷物置いたらまたリビングに集合ね」


果穂さんは、大志さんと共に部屋に向かった。


(とりあえず、行くか)


それを見送った後、残りの全員が移動を開始した。

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