《MUMEI》
煙り
樹はふと、辺りを見渡す。
誰もいないことを確認した。生物室に一人でいた。
樹は休み時間にアヅサに呼ばれ、置き忘れのレポートを探していた。
机の下に落としたらしく、人の気配がして反射的に
物影に身を伏せた。
多人数が生物室の中を通過して生物準備室へと入っていく。
樹は本能的に静かに呼吸していた。
直ぐに別の足音がする。
準備室に入っていく。
机と床の間で小さい足が揺れた。
息を潜め出ていくことも可能であったが、樹は準備室の中が気になって堪らなくなる。
純粋な好奇心、
知りたいという欲求、
二つの意識が珈琲とミルクのように混ざり合う。
脳が体に指令を下す。
それに黙って樹は従うしかない。
扉の前で耳をそばだてた。
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