《MUMEI》 電柱を一本一本「苛々するんですよ、あんた……!」 神部の迎えに来た車も随分と立派な外車だった。 そんな、後部座席に座り真横で嫌な告白を聞いた。 「俺は嫌いじゃないよ……」 「俺はそういうのが嫌いなんです。」 どーいうのだよ…… 「良い子ぶって人畜無害な顔して……誰か傷付けてもキニシナーイとこです。」 神部がにこやかに言ってくれた。 「傷付けた……、俺が?神部を傷付けた……」 「俺ね、先輩が苦しんでくれるとちょっと嬉しい。」 神部は俺と何かに苛立っている。それはなにか、分からない。 「……分からない……降ろして……。」 歩いて帰りたい気分。 電柱の一本一本を過ぎるたびに数えて、訳も分からなく溢れそうな涙を堪えた。 前へ |次へ |
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