《MUMEI》

「お帰りなさいませ、お嬢様」

開けられたドアを抜けた途端、私にそう言ってお辞儀をする人達。

「‥‥‥‥‥‥‥」

私はただ、ポカンとして立ち尽くしてた。

‥すると。

「さぁ、こちらへ」

クリーム色の髪をした、優しそうな男の人が、私に手を差し延べた。

私は恐る恐る、その手を取る。

彼氏と別れて以来、男の人と関わる事なんてほとんどなかった。

恐かったのかも知れない。

また、同じ事を繰り返したくなくて。

‥でも‥。

今、何だか凄く安心してる。

こんな気持ち、久し振り──。

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