《MUMEI》

放課後。

僕は塾の時間に間に合わせる為──

いつもより急いでいた。

「メガネー!」

「‥?」

生徒玄関を出て数秒後。

聞き覚えのある声に

僕は呼び止められた。
「霖堂‥?」

間違い無い。

霖堂だ。

「何か用かい? 僕はこれから塾が──」

「ほらよっ」

「‥!?」

放られた箱。

受け止めたはいいけど‥

一体何だ‥?

「‥ぁ」

もしかして‥。

「チョコレートか‥?」

訊くと

霖堂は真っ赤になって窓から身を乗り出した。

「‥ぎ‥義理だからなっ、義理!!」

「──フ‥、有り難う、貰っておくよ」

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