《MUMEI》

「どうぞ、お嬢様」

「‥ぁ、あの──‥」

「如何なされました?」

「さっきは‥」

「何も気になさる事はございません」

「───────」

「──さぁ、紅茶をどうぞ」

スバルさんは、新たにまたオレンジペコを注いでくれた。

ふわりと広がる、柑橘系の、甘酸っぱい香り。

「───────」

私は、その香りにウットリとしながら──ある事を考えていた。

告白──‥するかどうかを。

人目惚れしちゃった彼に、好きって言うべきかどうか‥今、凄く悩んでる。

「お嬢様、お具合が宜しくないのですか?」

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