《MUMEI》

MP財団金属加工研究室

 
その銀色に輝くメタル服をよく見ると胸には日本をはじめイギリスフランスカナダドイツと各国の小さな国旗が埋め込まれていた。 
どうやらアメリカ資本のMP財団と言っても何かしら国際的な研究のようである事は確かだった 。

日本の国旗を胸につけた人物が手を振り上げて合図をしている 

「香野君 もう少しアームを上げてください… 」 
室内に声が響く…そのやや皺枯れた声の持ち主は紛れもなく根元博士のようでどうやらこの研究を中心的に指揮しているのは博士のようだった。 
アームがゆっくりと上がる…すると先ほどからまばゆいばかりの光線を放っていた溶鉱炉の内部が少し青みを帯びて変化してゆくのがわかる 
ソレにしてもなんと神秘的な輝きだろう これほど色彩豊かに鮮明で鮮やかな光りを放つ物質は単に鉄やニッケル鉛といった従来の鉱物を溶かしているのではない事くらい誰の目にも明らかだろう 

この場所にいる香野ユカにもソレがなんであるのかは理解できていた。
慎重にガラスの・そのまた向こうの操作室でじっと博士の合図を待っている香野ユカは、田ノ倉栄一と共に根元博士に呼ばれこの研究室で助手を勉めていた。 

…ふいに右手側のドアが開き同じ銀色の服装をした男が入ってきた 
香野ユカはすかさず「…栄一さん…  」 
と、つぶやいた 。 

栄一は操作室のユカの方へ顔を向けるとヘルメットに付いたマイクを切り替えながら 
「ユカちゃん どう うまくいってる……合成… 」 

香野ユカは栄一の方へ目をやると 微かに笑みを浮かべそのしなやかな親指と人差し指で OK のサインを差し出して見せた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫