《MUMEI》

「ねぇ颯ちゃん、
今何時か分かる?」


「へ?

どうしたんだよ突然?」


「いや、ちょっと気になって……。」


すると颯ちゃんはあー、
と呻き声を出した。


「父さん達、
怒ってるよなぁ?」


「うん……。」


「何?

なんかあんの?」


凪谷賢史が不思議そうに首を傾ける。


「うーん……。

俺はいいんだけど、
蓮翔ちゃんの父さんがなぁ……。」


そう言って颯ちゃんは視線を俺へ流した。


「いいよ……、
どっちにしたって怒られるんだし。」


俺は力なくうなだれた。


そこで思い出した。


「君は?

病院に行かないといけないんじゃ無いの?」


「あっ!

すっかり忘れてたっ!!」


颯ちゃんがパァン!
と手を叩いた。


「ええよ、こんくらい。」


「よくねぇよ!

ほら、立てるか?」


颯ちゃんが凪谷賢史に手を差し延べた。


「ああ……。

おおきにな。」


嬉しそう…と言うよりかは、
少し寂しそうな顔をして彼は立ち上がった。

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