《MUMEI》 「ん? 俺、何か気に触ること言ったか?」 「別に……。」 そう言っては彼はため息をついている。 さっきからずっとこの調子だ。 あまりの彼の落胆様に、 俺も颯ちゃんも心底心配した。 やっぱり……傷が痛むのかな? 彼が負わされた、 思わず目を覆いたくなる程の傷を想像しながら身震いした。 その怪我の痛みに耐えながら彼は今、 俺と颯ちゃんの肩を借りて歩いている。 足を引きずりながら、 こけそうになりながらも懸命に歩こうとする彼に、 気が気でなかった。 だけど幾ら話し掛けてもついさっきの、 あの元気で明るい返事が帰ってこない。 「傷、かなり痛むよね?」 「……まあ…。」 いつまでもそんな態度の彼に、 とうとう颯ちゃんが痺れを切らした。 「いい加減にしろよ!」 前へ |次へ |
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