《MUMEI》

「ん?

俺、何か気に触ること言ったか?」


「別に……。」


そう言っては彼はため息をついている。


さっきからずっとこの調子だ。


あまりの彼の落胆様に、
俺も颯ちゃんも心底心配した。


やっぱり……傷が痛むのかな?


彼が負わされた、
思わず目を覆いたくなる程の傷を想像しながら身震いした。


その怪我の痛みに耐えながら彼は今、
俺と颯ちゃんの肩を借りて歩いている。


足を引きずりながら、
こけそうになりながらも懸命に歩こうとする彼に、
気が気でなかった。


だけど幾ら話し掛けてもついさっきの、
あの元気で明るい返事が帰ってこない。


「傷、かなり痛むよね?」


「……まあ…。」


いつまでもそんな態度の彼に、
とうとう颯ちゃんが痺れを切らした。


「いい加減にしろよ!」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫