《MUMEI》

「なんだよ……?」
二人の笑みに、ユウゴは表情を引き締める。
「いや、えらい前向きなんだなーと思ってさ」
ケンイチが面白そうに言う。
「当たり前だ。もし俺がネガティブ思考の人間だったら、今ここにはいない」
「あー、そういやそうか」
ケンイチは納得して頷いた。
「まあ、そういう人間でないと、あのプロジェクトで生き残ることもできなかっただろう」
ユウゴは織田に顔を向けた。
「それで、あんたらはなんで俺の味方するんだ?」
「そうだな……」
織田は考えるように呟くと、コーヒーを一口飲んだ。
「俺たちもおまえと同じ考えを持っているから、だな」
「俺と同じ?」
「そうだ」
織田は頷いて、テーブルの端に置かれてあった新聞を引き寄せた。
その新聞の日付は数カ月前の物だ。
一面に大きく何かの記事が書かれている。
そこに載せられた写真の人物には見覚えがある。
「これは……」
「おまえの起こした事件だ。プロジェクト発案者の暗殺事件。これは見事だったな」
「そりゃ、どうも」
ユウゴは答えながら顔を上げた。
すると織田が真剣な表情でユウゴを見ていた。
「おまえは、プロジェクトを止めようとしているんだろう?」
その問いに、ユウゴは頷いた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫