《MUMEI》
「キャアアアア!!!!」
「んへっ!?」
ものすごい雌叫びに目が覚めた。
「信じられない!!!あれほど遅刻するなって言ったのにっ…!!」
「…なんすか……?」
バシッ
「いだァ゙ァ゙ァ゙ー!」
「早く支度しなさい!!社長がもうすぐお着きになられるのよ!!!」
あ。
忘れてた。
今日、お見合いだった。
母ちゃんに叩き起こされ、みんなにクスクス笑われながら顔洗い、歯磨きし、昨日のうちに準備されていた着物を着た。
「さすが、お嬢様はやっぱり着物が一番似合いますね」
まきちゃんが着立てながら言う。
「やっぱり〜?惚れる?」
「背があるから尚更。これは社長さまも一ころされちゃいますね。ふふっ」
柔らかく笑うまきちゃん。
「ねぇ、まきちゃん、」
「はい?」
帯を締めながら、まきちゃんは顔を上げた。
「あたし、幸せになれるかなあ?」
「…お嬢様、」
「ん?」
そのとき、思いもよらないことを言われてひるんでしまった。
「お嬢様は、他に想い人がいらっしゃるのではないですか?」
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