《MUMEI》
絶体絶命!
コングと三度の対決。
あきらは両拳を上げて構えた。コングは怪しい笑顔で迫る。
浴衣姿の愛梨は、おなかに手を当てて、心配顔であきらを見つめていた。
いざゴング!
コングが突進する。凄い圧力だ。左右の大振りフック。あきらはよけながら右ローキック。
コングが体勢を低くして片足タックルに来るところをあきらがカウンターに顔面膝蹴り!
決まったはずだがコングは痛みをこらえて片足を掴む。
あきらは首筋にエルボー。しかし力任せに持ち上げた。コングはそのままオリンピック予選スラムで、あきらを床に叩きつけた!
「あああ!」
肩と側頭部を打ち苦悶の表情のあきら。コングが押さえ込もうとする。あきらは必死に下から蹴りまくる。
腹、顔面に命中。コングが怯む隙に転がって離れ、立ち上がろうとした瞬間に強烈なボディブロー!
「あっ…」
あきらが両膝をついた。
「あきらチャン!」
愛梨の悲鳴が廊下に響く。
コングは構わずあきらの両足を取るとひっくり返した。あきらは意識朦朧。
「ぐはぐはぎひひい。無慈悲な技かけてあげるね」
コングは何と反転。
「しまった!」
あきらは慌てたが遅かった。逆エビ固めが入ってしまった。
「あああ、待て、やめろ!」
「ぐふふふ」
あきらは真っ赤な顔をしてもがいた。エビ反りにされ、185キロのコングに腰を落とされては、どうしようもない。
「降参?」
「あ……」
悔しいけど、どうにもならない。
「やめろう」
「やめないよん。参ったなら、参りました。ごめんなさいと屈服しなさい。ぐふふふ」
人を辱めてそんなに楽しいか。あきらは歯を食いしばって耐えた。
「降参しないと全体重浴びせちゃうよ」
「やめろ、やめろ」
そんなことされたら背骨が危ない。
「やめなさいよ!」愛梨が叫ぶ。
「やめないよん」
愛梨は怒った。横を見るとモップが目に入った。愛梨はモップを掴むと、思いきりゴングの顔を拭いた。
「汚ねえ!」
ゴングは思わずあきらを離す。しかしあきらは立ち上がれない。
愛梨はモップを掴みながら後ろへ下がる。
「やったね?」
コングに危ない笑顔で迫られては、さすがの愛梨も足がすくんだ。
「来ないで」
コングはモップを奪い取ると放り投げ、愛梨の両足を素早く取りひっくり返した。
「キャア!」
そのまま逆エビ固めを容赦なく決めた。
「!」
人生で経験したことがない激痛が腰と背中に走る。愛梨は真っ赤な顔で叫んだ。
「やめろう!」
逆エビ地獄には耐えられない。
「わかった、やめて、わかったから!」
「降参?」
悔しいけど無理だ。
「降参、やめて」
「降参したら浴衣を脱いでもらうよん」
「嘘…」
降参できない状態にしておいて腰を落とす。
「あああ、そんなあ!」
どこまでSか。愛梨は叫んだ。
「あきらチャン助けて!」
「はっ!」
ダウンしていたあきらは後ろを振り向いた。愛梨が逆エビされているのを見て激怒した。
「ばっきゃろう!」
コングの側頭部に右ハイキック!
「あっ…」
コングが一発で倒れた。
「何本気で頭蹴ってんの?」
初めて見るコングの激怒の表情。しかし怯んではいられない。あきらは構えた。
「泣かすよ」
コングが来る。あきらは左ミドルキック。掴まれた。そのまま倒される。
コングは上になると、怪力であきらの両腕を頭上でクロスさせ、片手で押さえ込んだ。
あきらはもがいた。コングは片方の手を見せると、あきらに聞いた。
「あきら姫。ストマッククローって技知ってる?」
あきらは焦った。
「やめろ」
「その慌てた顔は知ってるみたいだね、ぐふふふ」
ストマッククロー。胃袋掴み。こんなバカ力に胃袋を掴まれたら終わってしまう。
「よせ」
「ぎひひひ」
愛梨はダウンして立てない。邪魔する者はいない。コングは情け容赦なくストマッククロー!
あきらは涙を流して両足をバタバタさせた。
絶体絶命の大ピンチ!

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫