《MUMEI》

西側の臨戦が見受けられない。それどころか、何も見えない。
あるのはただ、広がる荒野のみだ。


『キをツけろ、ワナかもしれない』

エレナ曹長の雑音混じりの通信が入る。まだ、このシステムを使いこなせないのだ。




『音が……する。』

前列の足取りが思わしくない。ゼンマイが切れた玩具のようにカタカタ横に揺れながら隊列を乱し始める。


「……音?」

僕には聞こえない。



突然の出来事だった。前列が僕等の方角へと向き直る。そして、僕の二つ前のイツバが襲われた。


『そこからウゴくな!シレイをマて!』

クロバの誰かが命令する。しかし、待てといわれても今の状態は待てない。
同士との交戦に戸惑い、彼等の攻撃が本気だと知る。
どうやら、神経を侵されているようだ。
『音』により乱された脳波が僕等を敵だと認識させているに違いない。




 『……聞こえるか。』

起伏の無い声、あの男だ。


『クロバには外部の音声を遮断出来るはずだ、各自内線のみで点呼を取れ、応えられないのは全て破壊しろ。』

……それは、仲間を殺せということだ。

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