《MUMEI》
慣れない二人
俺の後ろ、最後尾で屋代さんが呟いた。


気付けば、俺達二人は無意識に前の集団と距離を空けていた。


「ですよね…」

「あいつら、慣れてるよな…」

「一部は、諦め入ってるみたいですけど?」


俺が言った一部は


仲村夫婦の事だった。


「あぁ、確かに」


屋代さんは納得した。


「本当に、田中君がいて助かったよ」

「俺もです」


俺達は、いつの間にか並んで歩き、笑い合っていた。


「夜も、よろしくね」

「秀さんは、リビングで寝るらしいですからね」


それは、部屋で秀さんが俺に伝えた事だった。


毎年酒に酔った秀さんは、部屋には戻らずリビングのソファーで寝ているらしい。


だから、部屋のベッドは昼寝にしか使わないそうだ。


(そんなにお酒弱いのかな?)


秀さんの外見からすると、少し意外だった。


「何してんのー早くー!」


先頭の志貴が足を止めて俺達に手を振った。


「ますます注目浴びるんだけどな」

「…ですね」


俺達が慌てて合流すると


「逆ナン狙いのお姉さま達がジーッと見てたわよ」


と、志貴に言われ、睨まれた。

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