《MUMEI》

 
 高校生ともなると、なんでも一人でこなしていく。

 一人で入学手続きを進める。
 そんななかで、数名の女子に話しかけ、“友達”になった。
 なんだか順調で、このまま高校生活は楽しく過ごせそうな、そんな気がした。

 最初のクラス発表が行われ、手続きのとき“友達”になったナナと同じクラスになった。
 テンションが上がったまま、教室へ向かうと、教室には未だ数名しか揃っていない。

「早かったね」
 笑いながら言うナナに、確かにと笑って答える。

 チャイムが鳴り、教室には生徒が揃っている。こんなに生徒が揃っているのに、チャイムが鳴ったせいか、男子はみんな静かに座っている。
 つまんなそう……。
 女子は私とナナが喋っていたせいでか、みんなが集まって集団で盛り上がっている。

 私のクラスは、他のクラスから一目置かれていたらしい。
 賑やかで、仲が良くて、楽しそうだ……そう他クラスの子に言われ、少し鼻が高かったのを覚えている。

 私はこのころ、気になる男子がいた。
 奴にも、好きな子がいた。
 私と奴は仲が良くて、だから、そいつの好きな子も知っていた。
 その子とは、由梨という少しキツい目つきのクラスメート。
 髪は黒いストレートで、肩より少し長いほどの長さだ。
 私と奴と由梨は、席が横一列で並んでいた。
 ちょうど、奴を挟むかたちで並ぶ私たち。運命の悪戯なのか、それで三角関係だなんて……。
 私は思った。やっぱり、私に恋なんて、向いていないんだ。

 由梨は、クラスで一人浮く存在だった。
 私たち仲のいいメンバーのなかで、由梨と関わろうとする人などいなかった。つまり、クラス中が関わろうとしないでいたのだ。
 そんな由梨を好きだと言う奴は、変な趣味してるな……そう思った。
 でもどこかで、そんな奴の人間性を更に好きになっていた気がする。

 私は、由梨が一人ぽつんと浮いているのを見ていると、中学の自分を思い出し、心がチクチク痛むのを感じる。
 由梨は今、あのころの私みたいな思いをしているのだろうか。

「ねえ……なにしてんの?」
 そんな思いで由梨を眺めていたはずが、いつの間にか由梨の席に近づき、話しかけていた。
 ……もう、戻れない。
 

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