《MUMEI》

さっき紹介した男子、実は私の彼氏なんです。

でも、林檎君って呼ぶと嫌がるから──私は須藤君って呼んでます。

須藤君も、私の事は芳井って呼ぶから──名字で呼び合うのが当たり前みたいな感じなんです。

だけど──やっぱり林檎君って呼びたいなぁ‥。

「オイ芳井」

「!?」

「教科書忘れたから見してくれ」

「ぁ、ぅ‥うんっ」

須藤君は、よく教科書を忘れて来ます。

というか毎日。

それが、私には嬉しいんです。

だって、須藤君とピッタリ隣りにいられるから──。

「ぁ? 何笑ってんだよテメー」

「ぅわあッ」

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