《MUMEI》
窓ごしのキス
『終わんねー…』

『終わらないね…』

現時刻5時30分。

窓から夕日が差し込み、教室がオレンジ色に輝いている。

そんな中僕と隼人は教卓に腰かけていた。

思いの他掃除が進まず、僕と隼人は疲れきっていた。

『でも、あとは窓だけだよ。頑張ろう?』

隼人の手に窓拭き用の雑巾を持たせ、窓の方に引っ張って行く。

『はぁ…。よし、気合いいれるか!!』

隼人はバチンと自分の頬を叩き、雑巾をしっかり持った。

『俺、外側拭くよ』

そう言って隼人は窓の外に出た。

僕達の教室は1階だ。

窓から出ると、すぐに地面に足がつく。

『がんばろう』


僕も気合いを入れて、窓を拭き始めた。

しかし、僕はしばらく拭いてから重大な事に気付いた。

恥ずかしい…///

向かい合って拭いているので、いやでも隼人と目があってしまう。

黒くて、艶のある髪。

少し日焼けした肌。

整った顔立ち。

僕はもう、窓を拭くどころじゃなかった。

自分で自分の顔が赤くなっているのが分かったから。

すると


コンコン


窓を叩く音がして、そっちの方を見ると、隼人が笑ってこっちを見ていた。

心臓が高鳴る。

鼓動が速い。

ゆっくりと隼人の顔が窓に近付く。

僕も自然と体が隼人の方にいく。

そして、窓ごしに僕らの唇が重なった。

冷たい窓ガラスの感触が唇から伝わる。



どうしよう。

僕、隼人とキスしてしまった…。

まぁ、窓ガラスごしだけど…。


ううん。

それより何より、僕は気付いてしまったんだ。


隼人が、好きだって。

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