《MUMEI》
海の家
「じゃあ、お昼食べに行きましょうか」


果穂さんの一言で向かったのは、海水浴場にある海の家だった。


「いらっしゃいませー、あ、果穂さんいらっしゃい」

エプロン姿の女性が、果穂さんに微笑みかけた。


「こんにちは、今年もよろしくね」

「はいはーい、高山家御一行様ご案内ー」


女性が手を叩いた。


「はい! ただいま!」


(ん? この声?)


厨房から出てきたのは…


「「拓磨!?」」

「いらっしゃい! 志貴! それから皆さん、と、祐也も」


(俺はおまけか!)


「何でここにいるの!?」

俺が心の中でツッコミを入れている間に、志貴が質問した。


「バイト!」

「それはわかるけど…何でここに?」


志貴が首を傾げていると、後ろにいた果穂さんが説明を始めた。


「志貴の誕生日、どうしても一緒に祝いたいなら、その間ここのバイトしなさいって条件出したの。
役立たずなら、強制送還するとこだけど…どう?」


果穂さんは、鋭い視線を海の家の女性に向けた。


どうやら女性は店長らしい。


「まあまあですね。志貴ちゃんのビキニに釣られてきた割には、使えます」


女性はニヤリと笑った。

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