《MUMEI》

「わースケベ」

「ムッツリ」

「ストーカー」


厳・頼・祐の三人は、ニヤニヤしながら店の奥にある畳の間に入って行った。


固まる拓磨をよそに、他のメンバーもそれに続く。


「志貴も、…そう、思う?」


この時


拓磨は、捨てられた犬のように、志貴には見えたらしい。


…俺にはさっぱりわからないが。


(似てるけど、柊とは違うな)


柊は、乙女だったし。


俺は、二人をただ無言で見守っていた。


本当は俺も皆と先に行きたかったが、志貴が俺の洋服を掴んでいたので、それはできなかった。


「志貴…」

「…別に、気持ち悪くは無い…けど」


うつ向く拓磨に、志貴は小声で言った。


「けど?」


拓磨が顔を上げた。


「びっくりした」

「…夏休み、なかなか会えないし、誕生日、祝いたかったんだ。
役立たずにならないよう、屋台のバイトもしたし。
あ、バイト代でちゃんとプレゼント買ってあるから!
出来ればそれだけでも…」

「もういい。勝手にすれば? 頑張れば、秀さんの料理や志穂さんのケーキ食べれるかもよ」

「う、うん!」


その時の拓磨を、志貴は尻尾を振って喜ぶ犬みたいだと思ったらしい。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫