《MUMEI》

 
 気づくと私は由梨と会話をし、由梨は目の前で笑っていた。

 なにしてんだろう……。
 こんなことをしたら、また私も浮く存在になっちゃうのに。

 自分のした過ちに気づき、私は「じゃあ、また」と席を離れた。なるべく自然に。

 それでも、私の周りの“友達”が変わることはなかった。
 一番好きな“友達”はバスケ部で、いつも休み時間にはいない。だからか、変わりなく接してくれる。

 でも、あの瞬間から、なにかが……なにかが、変わろうとしていた。
 なぜ、由梨に話しかけてしまったのか……今でも少し、後悔している。

「優衣、一緒に、ご飯食べない? ダメかな?」
 遠慮がちに言ってくる由梨……断れない。
 どうしても、由梨が中学の私と被って見える。だから、心情が痛いほどわかって、断ることができなかった。

「……いいよ」
 いつの間にか、返事をしていた。
 ああ……私の高校生活、終わったかもしれない。

「ありがとう!」
 由梨は満面な笑みで、本当に嬉しそうで、私は、それでもいいかと思ってしまった。

「それでね! それでね!」
 由梨は思ったよりお喋りで、弁当もタッパーだったり、飾ったようなところがなく、なんだか憎めなかった。
 性格は、いいのかな?
 相性が合うとは、まさしくこのことで、一緒にいて気を遣わず、思いっきり笑える。
 由梨はそんな奴だった。

 ただ、あのことだけは、決して許さない。許せない……。
 

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