《MUMEI》

「うーん‥、チョコ系でオススメってありますか?」

「ザッハトルテとかどないでしょうか?」

「ザッハトルテ──」

「かなりお勧めですよ」

「じゃあ、それを」

「畏まりました。ほな、すぐにご用意しますね」

ハルキさんは、ニッコリと私に笑いかけて下がった。

「───────」

私は、暫くカップを両手に包んでぼんやりしてた。

チョコレートシロップで書かれた──ニッコリ笑った雪だるま。見てるだけで、何だか和む。

「?」

「お持ち致しました、お嬢様」

「ゎぁ──」

「お持ち致しました、お嬢様」

「ゎぁ──」

差し出された、ザッハトルテ。

口に入れると、チョコレートとアプリコットジャムの甘さが、フワッと広がった。

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