《MUMEI》

 
 あるとき、奴を含めたクラスメートの男子たち八名が、一気に謹慎を喰らったことがある。

 各授業を受けている最中に、一人……また一人と、教師に呼ばれ消えていく男子。
 詳細はよくわからないが、どうやらトイレの壁を壊したらしい。

 半数にわかれ授業を受けるために移動した教室で、奴は呼ばれた。

「はあ!?」

 もう私は、この次々に男子が消えていく様子に我慢できず、授業中にも関わらず大声を出した。
 他の女子も、いい気分ではないらしく、私の声を期にグチグチと、この気分の悪い状況に対する不満を漏らし始める。

「まじありえねー、ね、優衣」
「なんなの?」

「つか、なんで?」
「よくわかんない」

「もうまじ、やだー」

 私は、今にも泣き出しそうなほどだった。

「静かにしろ!」
 ここで、追い打ちをかけるように、教師が叫ぶ。
「は?」

 本気で教師を睨みつける私に、教師はたじろぐ。

「とりあえず、な、授業中だから、な、芳野」
「……」
 この教師は、なぜか私によく気を遣う。
 成績がいいから、だとか。
 ……単純なやつ。

 私は深くため息をつき、ふて寝に走った。

 他の女子は口々に、「優衣には甘いんだよな、こいつ」と言っている。
 私は苦笑しながらも、こんな状況なのにも関わらず、少し優越感を感じていた。
 

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