《MUMEI》

好き、そう言われて──私はすっかり上せてた。

「───────」

残り僅かになったコーヒーとケーキをちょっとづつ、ちまちま口に運んでると──ハルキさんは私を見つめて、何だかぼんやりしてるみたいだった。

「ハルキさん?」

「‥! すんまへんっ」

ペコリ、と頭を下げるハルキさん。

可愛い、って思った。

「そうだ──ハルキさん」

「──?」

「約束、覚えてますよね」

「はい、勿論」

ハルキさんは頷いて、ニッと笑った。

それから、

「──ぁ、お出かけですか?」

空になったお皿とティーカップを前に、腕時計を見つめてた私を見て、そう訊いてきた。

私が頷くと、

「ほな、今コートお持ちしますね」

ハルキさんはコートを持って来てくれた。

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