《MUMEI》 玄関まで来ると、白い扉の前で、私の手を引いてたハルキさんは立ち止まった。 そして、可愛い傘を差し出してきた。 「雪降っとりますんで──お持ちになって下さい」 「ぇ、はい──ありがとうございます」 親切だな──。 そう思いながら、開かれた扉の向こうに出て、私は傘を開いた。 振り返ると、ハルキさんがニッコリと私に笑いかけた。 「ほな──お気をつけてお帰り、お待ちしております」 「──はい、行って来ます」 雪が降る中を、私は一歩踏み出した。 ──今は冬。 でも私の心は、まるで春みたいに、ポカポカと暖かい──。 前へ |次へ |
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