《MUMEI》

アラタは生物準備室が開いていることを確認した。

連れと共に先に待つことにする。


暫くして、一人の小柄な男子生徒が入ってきた。
前髪が長く眼鏡をかけていて、大人しい雰囲気だ。

「おはよう。沖島。」
アラタは目を閉ざしたまま続けた。
「おいでよ。」
沖島という男はアラタの指示におとなしく従い隅に正座した。

「わかってる?
俺、凄く虫の居所が悪いんだけど」
アラタは無表情で言った。

「……」
無言の沖島に痺れを切らして殴り掛かろうとする者が出てきた。
その辺にあったシャーレが割れる。

アラタは人差し指を唇に充てる。落ち着いた者達を避けて沖島の耳元で囁いた。


「……してあげようか?」



隣に控えていた篝の指から煙草を奪う。
先が朱く燃えていた。

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