《MUMEI》

紅茶の水面を見つめながら考え事をしていた私は、一瞬──目を見張った。

そこに、ルキアの顔が映っていたから。

丸い瞳に、茶色味を帯びた髪。綺麗──。

「それは僕の台詞でございますよ、お嬢様」

「?」

キョトンとする私に、ルキアは笑いかけてきた。

その笑顔が、何だか凄く眩しく見えた。

「──ねぇ、ルキア」

「はい」

「──ううん、何でも」

言わなくても、ルキアなら分かる。その証拠に──彼は今、頬を薔薇色に染めている。

恥ずかしげに俯いて、でも嬉しそうにして。

「──有り難うございます」

顔を上げたルキアは、小声でそう言った。

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