《MUMEI》

「──お出かけになられるようですね」

「うん、これを飲み終わったら──ね」

本当は、もっとゆっくりしていたいのだけれど。

なかなか、そうはいかない。

「───────」

それでも、少しでも長くここにいたくて──わざと、ゆっくり飲んでみる。

冷めて、温くなった紅茶。

でも、美味しいと感じた。

ルキアが淹れてくれた紅茶だから、かな──。

きっとそうだ。

そっ‥と空になったティーカップをソーサーに置いて、私は席を立とうとしたら、それをさっしたかのように、スッと椅子が引かれた。

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