《MUMEI》 驚いて、亜柚乃はケルベロスのほうを振り向く。彼は、毛を逆立て、歯をむいている。 ケルベロスが唸るところなんて、初めてみた。 「どうし・・・」 「ガルルルルッッッ!!ワンッ!ワォンッッ!!」 あわてて止める亜柚乃を尻目に、ケルベロスは吠えたてた。それはどこか、怯えているように見える。 ふと、少年がこちらを向いた。 「あ・・・。」 まっすぐな視線。 綺麗すぎる顔だち。 空気が、固まったような錯覚。 少年は、一瞬驚いたように目を見開いて。 それから、まるで夢を見るようにうっとりと、微笑んだ。 前へ |次へ |
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