《MUMEI》
愛は会社を救う(25)
「女性と言えば…」
顔を近付けたついで、半ば強引ではあったが話を先週の件に持っていく。
「金曜日に、副支店長が山下チーフから、ずいぶん長いレクチャーを受けていたようですね。何か重大なトラブルでもあったのですか」
「ああ、あれな」
話に乗った仲原が、さらに距離を詰めて来る。
「なんか大変だったらしいよ。新しい人事労務管理システム?あれで副支店長が、まだやっちゃいけないタイミングで、データ更新しちゃったらしいのよ」
「おやおや」
これは詳しい話が聴けそうだ。
「前任の時代に、本社から注意喚起の通達があったみたいだけど。まあ、あの世代はシステム疎いから。お互い意味わかってなくて、引継ぎが落ちたらしいんだよな」
「ほう」
「システムの使い方も、その手の通達の意味も、支店内で理解してんの山下だけなんだよね。副支店長は丸亀に"訊いて来い"って言ったらしいんだけど、あいつはダメでさ。結局、山下が直々にご指導申し上げるってことになったわけ」

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