《MUMEI》

ヴァンは時計に目を遣る。四時十分。起きる予定の時間まで後一時間二十分ある。二度寝するかどうかヴァンは迷ったが、その問題に決着が着く前にある疑問が浮かんだ。

「ルキアお前、一体何時からここに居た……?」

ルキアの答えは彼にとって衝撃的……というか憂慮すべきものだった。

「十二時くらいからー。」

ヴァンが眠りに就いたのは十一時五十分頃。まだ眠りも浅いであろう時に既に忍び込まれていたということだ。

こんな子供の接近に気付かなかった……? この俺が……? こいつ何時の間にそんな芸当を……? いや、そんな筈がない……ただ疲れを溜め込み過ぎているだけだ……きっとそうだ……

ヴァンは自分にそう言い聞かせる。しかし、それにも問題があることに気付いた。

疲れを溜め込み過ぎだと? それは傭兵として良くないだろう……! ……少し、長めの休息を取るべきか……

「どしたの?」

ヴァンが何やら難しい顔をして考え込んでいたのを不審がったルキアが話し掛ける。

「……何でもない。朝食までお前は眠っていろ。」

しかしヴァンの返事はつれなかった。いつものことだからルキアにとっては何てことないが。

「ぶー。せっかく気遣ってあげたのにー。」

何てことないが、一応ぶーたれるのがルキアという少女だ。

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