《MUMEI》 愛は会社を救う(26)「それで、誤って更新されたデータは復旧したのですか」 「ああ。副支店長が山下と居残って、データの決済処理までやり直したらしいよ。でも本社にデータ復元してもらうのに、相当いろいろ言われたみたい。副支店長、ずっと電話で平謝りよ」 「なるほど」 そこまで聴いて、私は感じたことを率直に口にしてみた。 「今回の件は、山下チーフのおかげで無事解決したということですね。全てを把握している方が一人いらっしゃると、本当に助かる」 「だけどさ、それがことごとくなのよ。ことごとく」 仲原が露骨に顔をしかめる。 「何でも山下に訊かないと分かんないんじゃ、支店長も副支店長もリーダーも、存在意義ゼロだろ。現に今回だって、副支店長のシステムID使って、実質的には山下が決済処理までしてるんだぜ」 「まあ意思決定までしているとは言えませんが、立場的に役職以上のイニシアチブを握っていると言えるでしょうね」 「それに、あいつならこうなること前もって予測できたと思うんだよ。それを事が起こるまで黙ってて助言もしないんだから。まったく、いけ好かねえ女だよ」 仲原のボルテージが上がってきたところで、私は暇乞いを切り出すことにした。 「失礼、長い時間お邪魔をしてしまいました。お茶が冷めますので、これで」 「おお、そうか。また来てよ」 一礼して去る私に、仲原が軽い調子で2、3度手を振った。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |