《MUMEI》

 「ルソーだよ…… 」 
男がポツリと言った 。 

宏介は 「ああ…やっぱりそうか……アレはアンリ ルソーの世界…… か…」 と、こころの中で呟いた… 。 

そしてゆっくりと目を閉じると…懐かしいルソーの画集に思いを馳せた

あの不思議に神秘的な世界…どこか無邪気だけど…懐かしく包み込んでくれるファンタジーな萬話の世界……ルソーの絵画… 


……「よぉ 兄さんォ 川を見てみろよ…… 」 

男の声に ハッとしながら目を開けた宏介の世界には
いつのまにか大きな森はなく
淡いグリーンな寒色やピンク色の暖色系の小山たちがどこまでも重なり合う
夢のようなパステルカラーの草原へと変わっていた 

小川の水の色は鉛色に光る銀色から濃紺の流れへと映り変わり…その中を黄色の背びれを輝かせた 瞳のない大きな目をした奇抜な形の魚たちが泳いでいた 


「コレは……クレーの……? 」 
宏介の口から 驚きの声があがった…… 

「…知ってるじゃないか……(笑) ここの魚たちはイタズラ好きだからな……気を付けろよ…  」  
男はためらいなく小舟に寄ってくるその奇妙な魚たちに水を浴びせかけけたりして…からかっていた 


それにしても川沿いの丘の景色には目を奪われてしまう…なんとやさしく流れるようなメロディーとリズミカルな色たちの競演だろう…… 

宏介は思わず声をかけた…
「キミ……あっ否 あなた…… 名前は? ……… 」 
宏介は何故か…この男がすっかり友達になったように思えてきた  

 「え…今ごろ名前かい…(笑) 」 
男は(苦笑)しながら…もうすっかり乾いていたボサボサの髪の毛を更にかきあげた 

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫