《MUMEI》

 「悪魔……悪魔って英語じゃ何て言うんだい?…」 
男は唐突に訪ねてきた 

宏介は少し戸惑ったように
「悪魔? …デビルかな…」
宏介は男の口から出た悪魔と聞いて一瞬顔が強張った… 


「いやォ……悪魔のような…乞食だよオラは…… (笑) そうか……じゃあ デビルのデをとって…ビル…とでも呼んでくれよ……(笑) 」  
男は宏介の顔が少し強張ったのを見てとり……まったく心配ない!と、言ったようにおどけて見せた…… 

「年は……年齢は聞くなよォ なんせ……アンタらが生まれる前から…だからな(笑) …ひい祖父さんのひい祖父さんじゃ足りないよ…がぁはははぁ〜(笑)…」 
男…通称ビルは屈託なく(笑)一人で(笑)っていた…それは鼻が曲がるような下品な(笑)い方だった 

「それより……もうすぐだぜ……… 」 


また小川の景色がクレーの丘から 茶褐色な深い森へと変わろうとしていた 

小川の水の色もその景色に合わせるように緑色の深い冷たい色へと変化していく 

通称ビルが突然指を差した 

「よぉ…アレが見えるかい? …あの森の分け目の所の大きな灰色をした石の上にじっと座っている男が……  」 

宏介は…通称ビルに言われるまま指先の方へ目をやると…

確かに大きな石の上で肩肘を膝ついて…じっと一点を見つめながら何かを考えこんでいるような……逞しい筋肉姿の男が見てとれた  

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