《MUMEI》

玄関に行くまでが、何でか知んないけど‥めちゃめちゃ長く感じた。

誰かに手ぇ取られてある歩くってあんまないし‥。

つーかコイツ‥カッコよ過ぎだし‥。

ってアタイ何考えてんだろ‥。

自分で自分が分かんなくなっちまったじゃねーかコノヤロー‥。

「──ではお嬢様」

「‥?」

「お気をつけて行ってらっしゃいませ。お帰りをお待ちしております」

「おう、サンキュ」

目の前には、狭い──雪が積もった通り。

「──チヒロ」

「はい」

「また作ってくれっか、さっきのヤツ」

「勿論でございます」

「ヨロシクな」

アタイは店を出て、歩き出した。

「‥ぁ」

振り返ったら、目に飛び込んできた──店の名前。

けど、

「‥‥‥?」

‥読めねぇ。

まぁいいか。

後で調べてみよ──。

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