《MUMEI》
個体
アラタは笑い出した。
笑うと表しているが実際はただ口元が上がっていると辛うじてわかるくらいのものである。
「いいよ、もう、離して。」
アラタの一言で沖島は開放された。

「沖島、歩くたびに償いなさい。」
アラタはそう言うといつものように静かに出て行った。

篝が後ろに着いていく。

「まだ嬲れた。」
篝は小さく抗議した。

「いいんだ。アレは、壊れているから。
きっと沖島という個体を認められたかっただけなんだね。気を引くのに文字通り、夢中だったのさ。」
アラタは手術用手袋を取り替えた。

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