《MUMEI》

「‥?」

何かしら、あれ‥。

あんな建物、いつ建ったんだろう。

「───────」

扉の前に‥誰か立ってる‥?

私は、ゆっくりと近付いた。

「お帰りなさいませ」

「‥ぇ?」

私は、耳を疑った。

その声は、私のすぐ側から聞こえた。

‥でも。

まさかそれが、私に向けられた言葉だったなんて、思いもしなかった。

「お嬢様、お荷物をお預かり致します」

「───────」

考えるよりも先に、私の手は彼にバッグを差し出していた。

「さぁ、どうぞお入りになって下さい」

扉が開かれて、中から洩れてきた明かりの眩しさに、私は思わず目を細めた。

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