《MUMEI》

畏まりました、そう言って──その人は下がって行ってしまった。

私はポツンと椅子に座ったまま、ただ一点を見つめていた。

「‥‥‥‥‥‥‥」

私は‥何でここにいるのかしら。

突然声を掛けられて、入ってしまったけれど‥。

私はここで、足りない何かを見付ける事が出来るかしら。

「──お待たせ致しました」

その人が手にしているトレイには、大きめのグラス。

それがテーブルに置かれて初めて、私はハッとした。

私の好きな、苺パフェ。

でも、自分から注文はしていない。

なのに彼は、これを持って来た──。

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