《MUMEI》

 アラスカ州 「フェアバンクス」 

まるで冷凍庫の中へすっぽり入り込んだようなその街は…少しでも熱気を帯びたモノは蒸気となって蒸せ上がり
人々は今にも氷りつきそうな白い息を吐きながら急ぎ足で街を往来している

そんな街に…厚めの防寒着を着こみ四輪駆動車に乗り込む 栄一とユカの姿があった


「田ノ倉さん……ほんとに…知らないわよォどうなっても……… 」 
…香野ユカは不安そうな表情で言った 

寒暖計の温度はマイナス20度を差している 
…ユカは…時折曇るウィンドウガラスを拭いたりして栄一の運転をサポートしていた 

「…大丈夫だよユカちゃん……博士にはちゃんと言ってあるから…… 」 
栄一は手慣れない雪道の運転と必死で格闘していた 

「…でも……わからないのよね……どうして急に…プロジェクトが解散になるのか………」
ユカは揺れながら滑りながらもなんとか進んでいる足元のアイスバーンを心配そうに覗きながら言った 

「何か……僕たちに隠してるとしか思えないんだ…
…君にも…東京から急に帰ってこい…なんて……どう考えても不自然だよ…… 
何か……隠してる………博士にしても……… 」 
栄一がつぶやくように言うと……二人は顔を見合せた 

「え……博士も……なの… 」 
ユカの顔が一瞬曇った…。

一時間あまり走ったところで二人の乗った車は……
金網で囲まれた広い敷地内の入り口に着いた…… 

なんとかここまで運転し終えた栄一の顔には安堵の疲れが見てとれた……車は路肩の盛った雪に一度ぶつけただけだった…。


建物の出入り口はしっかりと閉じられ二人の拳銃を携帯したガードマンが常駐していた 

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