《MUMEI》

「どうして‥?」

「と‥仰いますと?」

「私は何も──」

「左様でございます。ですが、私はお嬢様の執事でございますので──」

「‥ぇ‥?」

まじまじと、私はその人を見つめた。

目が合ってドキリとして‥目線をずらすと、その人が付けている名札に気付いた。

【TAKUTO】

タクト‥?

この人は、タクトという名前らしい。

初めて見る名前。

勿論、顔も。

だけど何故か、そんな気がしない。

「───────」

「どうぞ、お召し上がりになってみて下さい」

そう言われて、私は徐にスプーンを取った。

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