《MUMEI》
「良かったです」

「？」

「──やっと笑顔になられましたね」

「──ぇ」

横を見ると、タクトさんが私に笑顔を向けていた。

優しい笑顔を。

その笑顔に、私は惹き付けられていた。

どうして、こんなにも嬉しそうに笑っているのかしら‥？

「──お嬢様の幸せは、私にとっても幸せですから」

「‥あなたにとっても‥？」

「はい」

「───────」

「逆に‥お嬢様がお辛い時は、私も辛いのです」

「──どうして？」

「お嬢様の、執事でございますから」

「執事──」

彼は、本当に私の事を考えてくれているらしい。

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